「無理に行かせなくていい、今は休ませる時期だ」
そう頭では分かっていて、こどもが家でゴロゴロしたり、ゲームをしたりする姿を見守れるようになってきた頃。
ふと、保護者の方の心に次のような強い不安が押し寄せてくることがあります。
「この様子を見る期間は、一体いつまで続くのだろう」
「いつになったら、自分から動き出してくれるのだろう」
目に見える変化がない毎日が続くと、「休ませているだけで本当に大丈夫なのか」と焦りを感じてしまうのは、親として当然の感情です。
今回は、不登校からの「回復にかかる時間」について、私たちが支援の現場で大切にしている視点をお伝えします。
不登校は「短距離走」ではありません
まず最初にお伝えしたいのは、「不登校は短距離走ではない」ということです。
こどもが学校に行けなくなるまでには、本人の自覚の有無にかかわらず、長い時間をかけて心身に大きな負荷やストレスが積み重なっています。
そして、限界を迎えてエネルギーが完全に枯渇してしまった状態が、不登校の初期段階です。
空っぽになった心のコップに、再びエネルギーを一滴ずつ溜めていく作業には、こどもがすり減らしてきたのと同じか、あるいはそれ以上の長い時間が必要になります。
「数日ゆっくり休んだから、来週からは行けるだろう」といった、短距離走のような急激な回復を期待してしまうと、こどものペースとのズレが生じ、結果的に親も子も苦しくなってしまいます。
不登校からの回復は、ペース配分が何よりも重要な「長距離走(マラソン)」のようなものだと捉え直してみてください。
なぜ「3ヶ月」をひとつの目安にするのか
では、具体的にどれくらいの時間を見守ればいいのでしょうか。
もちろん、回復にかかる時間は一人ひとり全く異なり、「○ヶ月で良くなる」と断言することはできません。
しかし、私たちティーンズ・プレイスが伴走支援を行う中で、ひとつの明確な時間軸の目安にしているのが「3ヶ月」という期間です。
実際、私たちの継続支援は3ヶ月単位でのご契約としています。
その理由は、1ヶ月という短い期間では見えにくい小さな変化も、3ヶ月という時間をかけてじっくり伴走を続けることで、少しずつ具体的な「動き」として見えてくることが多いからです。
「昼夜逆転が少しだけマシになった」
「家族と雑談する時間が増えた」
「安定して週1回の面談を受けられるようになった」
大人の目から見れば些細な変化に見えるかもしれませんが、エネルギーが枯渇していたこどもにとっては、これらは次へのステップに進むための「大きな一歩」なのです。
すぐに結果(登校などの目に見える行動)を求めず、「まずは3ヶ月、この子の心が安定することだけを目標にしよう」と期間を区切ってみることで、見守る保護者の方の心にも少し「ゆとり」が生まれるのではないでしょうか。
回復とは「元の状態に戻すこと」ではありません
もう一つ、焦りを手放すために大切な考え方があります。
それは、回復とは「不登校になる前の、無理をして学校に行っていた状態(元の状態)に戻すこと」ではない、ということです。
十分な休養を取り、心のエネルギーが溜まってくると、こどもたちは自ら動き出そうとします。
しかし、その行き先が必ずしも「元の学校の教室」であるとは限りません。
別の学びの場を選んだり、新しい進路を見つけたりすることもあります。それこそが、その子が「その子らしさを取り戻していく過程」であり、本当の意味での回復です。
「いつになったら学校に行くのか」というカレンダーを見るのではなく、「今日は昨日より少しリラックスできているかな」という、目の前のこどもの表情を見てあげてください。
急がず、決めつけず、こどものペースに合わせた時間軸で見守ること。
それが、結果的に最も確実な「次の一歩」への近道になります。

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