「学校に戻ること」だけが正解?教育機会確保法とCOCOLOプランから見つめ直す不登校のゴール

不登校支援の考え方

こどもが不登校になったとき、保護者も、そしてこどもを心配する学校の先生も、無意識のうちに「なんとかして元の学校生活に戻してあげなければ」と考えるのは自然なことです。

しかし、「学校に戻るか・戻らないか」という二択だけで未来を考えてしまうと、こどもへのプレッシャーが高まり、かえって身動きが取れなくなってしまうことが少なくありません。

実は現在、国(文部科学省)が定めている不登校支援のルールにおいて、「学校復帰」は唯一のゴールではないと明確に示されていることをご存知でしょうか。

今回は、現在の日本における不登校支援の「本当のゴール」について、国の指針を交えながら整理してみたいと思います。

法律が定めた「休養の必要性」と「社会的自立」

2016年、日本で初めて不登校のこどもたちの学びを保障するための法律である「教育機会確保法(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)」が成立しました。

この法律と基本指針の中で、国はこれまでの「学校復帰至上主義」を大きく転換し、以下の重要なメッセージを発信しています。

  1. 不登校は「問題行動」ではない
    不登校は取り巻く環境や状況によっては、どの児童生徒にも起こり得るものであり、不登校であること自体を問題行動としてはならないと明記されました。
  2. 「休養」の必要性の肯定
    こどもが疲弊している時期に無理な登校刺激を与えることは避け、心身のエネルギーを回復させるための「休養」が不可欠であると国が公式に認めています。
  3. 最終目標は「社会的自立」である
    これが最も重要な点です。支援の目標は「学校に登校すること」という結果のみを目標にするのではなく、こどもが自らの進路を主体的に捉え、「社会的に自立すること」を目指すべきであると定められました。

つまり、「今は休ませていいのだろうか」という保護者の迷いや、「無理にでも教室に連れてくるべきか」という先生の葛藤に対する国の答えは、「まずはしっかり休養させ、将来的に社会で自立できれば、必ずしも元の学校に戻ることだけが正解ではない」というものなのです。

COCOLOプランが示す「多様な学びの場」

さらに文部科学省は、この理念を現場で実現するために「COCOLOプラン」という不登校対策の基本指針を推進しています。

このプランでは、こどもたちが学校の教室以外でも学べるよう、「多様な学びの場」を確保することが強く推奨されています。

例えば、学校内にある別室(サポートルーム)、公的な教育支援センター、そして民間のフリースクールや、自宅でのICT(オンライン)を活用した学習などです。

こどもが安心できる環境であれば、学校の外での活動であっても、前向きな自立への一歩として社会全体で認めていこう(出席扱いなどの柔軟な対応をしていこう)というのが、今の日本の教育のスタンダードになりつつあります。

回復とは「元の状態に戻すこと」ではありません

私が支援の現場で、保護者の方や学校の先生方と共有したいと常に願っているのは、「こどもの心が安定すること」の優先順位です。

不登校からの「回復」とは、不登校になる前の無理をしていた状態(元の状態)に戻すことではありません。

枯渇していた心身のエネルギーを十分に蓄え、その子らしさを取り戻していく過程こそが、本当の意味での回復です。

心が安定してエネルギーが溜まれば、こどもたちは自ら「次の一歩」を探し始めます。

その結果として元の学校に復帰する子もいれば、別の学びの場や新しい進路を自分で選んでいく子もいます。

どちらを選んだとしても、それがその子にとっての「社会的自立」につながるのであれば、支援は大成功なのです。

保護者と学校が「同じゴール」を見るために

「学校復帰」だけを目標にしてしまうと、どうしても家庭と学校の間で「休ませたい親」と「行かせたい先生」という対立構造が生まれやすくなります。

しかし、「まずは心のエネルギーを回復させること」、そして「最終的に社会的に自立すること」という法律が定めた本来のゴールを共有できれば、保護者と学校は対立する関係ではなく、こどもの成長を一緒に見守る「パートナー」になることができます。

最初から遠くのゴールを見なくても大丈夫です。

まずは、目の前のこどもが安心して休める環境づくりから。

焦らず、急かさず、こどものペースを尊重しながら、家庭と学校、そして私たちのような民間機関が手を取り合って伴走していけたらと願っています。

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