こどもが学校に行けなくなり、家でゆっくりと休ませる決断をしてからしばらく経った頃。
ずっと布団の中で過ごしていたり、無気力だったお子さんが、ふとリビングに出てきて「あーあ、なんかひま」「退屈だな」と口にすることがあります。
親としては「ひまなら、遅れている学校の宿題でもやればいいのに」と喉まで出かかってしまうかもしれませんが、実はこの「ひま」「退屈だ」という言葉は、不登校からの回復プロセスにおいて非常に重要なポジティブなサインなのです。
今回は、こどもが退屈し始めた時の心のメカニズムと、そこから親がどう関わっていけばよいのかについてお話しします。
こどもの「ひま」は、エネルギーが溜まった証拠
不登校の初期段階は、画一的な学校生活の中で無理を重ねた結果、心身のエネルギーが完全に「枯渇」してしまった状態です。
スマートフォンのバッテリーが0%になっているのと同じで、この時期は何もできず、ただひたすらに休む(充電する)ことが必要不可欠です。
こどもは、家庭という安心できる環境の中でゆっくりと休養をとることで、少しずつエネルギーを取り戻していきます。
そして、生命維持のために使っていたエネルギーが満タンになり、「自分以外のもの」へと向けられる余剰エネルギーが生まれたとき、はじめて「ひま」「退屈だ」という感情が湧き上がってくるのです。
つまり、「ひま」という言葉は、こどもの心のバッテリーがしっかりと充電され、「そろそろ何かをしてみたい」という意欲の芽が出始めた決定的な回復のサインだと言えます。
親が陥りやすい「NGな対応(罠)」
こどもが元気を取り戻し、「ひま」と言い始めると、保護者の方は「やっと動き出してくれた」と嬉しくなり、つい次のような言葉をかけてしまいがちです。
「じゃあ、明日は少しだけ学校に行ってみる?」
「退屈なら、たまってたドリルでもやろうか」
しかし、ここで急に学校のプレッシャーや大人の正解を押し付けるのは、とても危険な対応です。
せっかく少し溜まったばかりのエネルギーに対して、いきなり高いハードル(強い登校刺激や学習の負担)を突きつけると、こどもは「やっぱり自分には無理だ」と自信を失い、一気にエネルギーが枯渇して逆戻りしてしまうリスクがあるからです。
次のステップは「本人の興味・好きなこと」から
エネルギーが蓄積された段階で次にすべきことは、学校のカリキュラムを押し付けることではありません。
まずは、ゲーム、アート、ものづくりなど、こども自身の「興味関心」に基づいた活動からスタートすることが大切です。
「ひまだから、あのゲームの続きをやってみようかな」「ちょっと絵を描いてみようかな」といった、こども自身が心から「やりたい」と思えるスモールステップを通じて、少しずつ社会との接点を再構築していくプロセスが必要になります。
好きなことに没頭する時間は、決して無駄な時間や現実逃避ではありません。
「自分はこれが好きなんだ」「これをやっているときは楽しい」という感覚を取り戻すことは、低下してしまった自己肯定感を回復させるための大切なリハビリテーションなのです。
回復とは「元の状態に戻すこと」ではありません
こどもが不登校になると、大人はつい「不登校になる前の状態(無理をして学校に行っていた状態)」に戻すことを回復のゴールだと考えてしまいがちです。 しかし、本当の回復とは「元の状態に戻すこと」ではなく、「その子らしさを取り戻していく過程」そのものです。
こどもが「ひま」と言い出したら、焦らずに「そっか、ひまなんだね。何かやりたいことある?」と、ゆっくり本人のペースに寄り添ってあげてください。
その「やりたいこと」の小さな積み重ねが、やがてその子自身の新しい道(将来の自立)へと繋がっていくはずです。
事例
なお、絶対に登校や勉強を提案してはいけないわけではなく、提案して嫌がる素振りを見せたら引く……この軽く背中を押してみて、まだ無理そうなら押すのを止めることが大切です。
例えば元気そうに見える子の横に期限切れのドリルが置いてあったので、ドリルも少しやらないか声掛けをしたことがあります。
その子は頑張ってやってくれたけれど、1ページも終わらずに「やったよ」と止めてしまいました。
そうしたときに「せめて1ページは頑張りなさい」と言わずに少しでもやったことを労って、大人のもっとやってほしい気持ちを抑えることが肝心です。

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