話題のドラマ「タツキ先生は甘すぎる!」が、先日ついに大団円で最終回を迎えました。
全編を通して描かれた不登校のこどもたちのリアルな葛藤や親の焦りについて、これまで何度か考察をしてきましたが、今回はドラマの「タイトル」そのものに着目してみたいと思います。
主人公であるタツキ先生の、こどもの要求を否定しない姿勢や、大人の理屈で無理に導こうとしない関わり方は、世間一般の厳しい目線から見れば、まさに「甘すぎる!」と言われてしまうような対応だったかもしれません。
しかし、支援の現場にいる立場から見ると、この「甘すぎるほどの対応」こそが、傷ついたこどもの心を回復させるための最大の鍵であり、実は現在の国(文部科学省)の不登校支援の指針とも完全に一致する、極めて専門的なアプローチなのです。
今回は、「こんなに甘やかしていいのだろうか」と悩む親御さんへ向けて、大人がこどもに「甘すぎる」ほどの対応をする意味と、その公的な根拠について整理してみたいと思います。
国の指針(COCOLOプラン等)が示す「休養の肯定」と「徹底的な寄り添い」
「甘やかすと不登校が長引くのでは」「無理にでも学校に行かせたほうがいいのでは」と焦る保護者の方に、ぜひ知っていただきたい公的な方針があります。
2016年に成立した「教育機会確保法」という法律では、不登校のこどもに対する「休養の必要性」が明確に定められました。
不登校の初期など、心身が疲弊している時期に無理な登校刺激を与えるのではなく、まずはエネルギーを回復させるために「ゆっくり休むこと」の重要性が、国によって法的に認められたのです。
さらに、文部科学省が現在強力に推進している不登校対策「COCOLOプラン」においても、不登校は「誰にでも起こり得る」ものであると明記されています。
その上で、支援の基本姿勢として「子供たちに、『大丈夫』と思っていただけるよう、徹底的に寄り添っていきます」と宣言されています。
タツキ先生の「甘すぎる」ように見える対応は、まさにこの「休養の肯定」と「徹底的な寄り添い」を体現したものであり、現在の日本の教育行政が目指す支援のスタンダードそのものなのです。
「甘やかし」と「甘えさせ(受容)」の決定的な違い
では、なぜ「徹底的に寄り添う(甘くする)」必要があるのでしょうか。
ここで重要なのは、物質的な欲求を無制限に満たす「甘やかし」と、精神的な欲求を十分に満たす「甘えさせ(絶対的な受容)」は全く別物であるということです。
不登校になったこどもは、表面的にはダラダラしているように見えても、心の中では「学校に行けない自分はダメな人間だ」と激しく自分を責め、エネルギーが空っぽにすり減っています。
そんな極限状態にあるこどもに対して、「明日は行ける?」「少しは勉強したら?」と正論(厳しさ)をぶつけても、心は防衛本能からさらに固く閉ざされてしまいます。
すり減ったエネルギーを回復させるためには、「あなたはどんな状態であっても、そのままのあなたで価値があるんだよ」という、圧倒的で絶対的な肯定(=甘すぎるほどの受容)が絶対に必要不可欠です。
大人が「甘すぎる」くらいにすべてを受け止めてくれる環境があってはじめて、こどもの中に「自分はここにいていいんだ」「自分は守られているんだ」という『安心の土台』が形成されます。
「甘さ」の先にある、こどもの「変わりたい意志」
「そんなに甘くしていたら、一生そのまま動かなくなるのでは?」
親御さんがそう恐れる気持ちは痛いほどよく分かります。
しかし、現実は逆です。
COCOLOプランでも、不登校支援の目標は「学校復帰」だけではなく、こどもが自らの進路を主体的に捉えて「社会的自立」へ向かうことだとされています。
大人が「正しい方向へ導こう」とする焦りを手放し、こどものペースを尊重し尽くす(甘くする)ことで、こどもは十分にエネルギーを充電することができます。
そして、エネルギーが満タンになると、こどもは本来持っている成長意欲を取り戻し、自分自身の内側から「そろそろ動いてみようかな」「変わりたいな」という自発的な意志を必ず芽生えさせるのです。
タツキ先生の「甘すぎる」対応は、こども自身が自らの足で歩き出す日を信じて待つ、最も力強く、最も覚悟のいる支援の姿だったと言えます。
一人で「甘く」なりきれない時は、私たちを頼ってください
とはいえ、毎日ご家庭という密室でこどもと顔を合わせている親御さんが、世間の目や将来への不安を振り切って、一人で「甘すぎるほどの受容」を貫き通すのは、並大抵の覚悟ではできません。
「頭では分かっているけれど、どうしても小言を言ってしまう」というお気持ちは、痛いほどよく分かります。
だからこそ、その役割を家庭だけで背負い込まず、私たち「第三の大人(専門家)」に頼ってください。
ティーンズ・プレイスの「初回相談(60分・無料)」は、お子さんへの関わり方に迷う親御さんご自身の「心の整理」や「ガス抜き」のためにお使いいただいて構いません。
親御さん自身がホッと安心し、肩の力を抜く(親御さん自身にも甘くする)ことが、お子さんへの温かい受容へとつながっていきます。
まずは一緒に、今の不安を整理するところから始めましょう。