10月に入り、朝夕の風に秋の深まりを感じる季節になりました。
学校現場では、運動会・体育祭、文化祭や合唱コンクールといった大きな秋の学校行事に向けた練習が本格化する時期です。
そんな中、
- 「朝になると腹痛や頭痛を訴えるようになった」
- 「『行事の練習が嫌だ』と部屋に閉じこもってしまった」
- 「『行きたくない』とポツリと漏らした」
と、お子さんの急な変化や行き渋りに戸惑っていらっしゃる保護者の方も多いのではないでしょうか。
「せっかくの学校行事だから、できれば参加して思い出を作ってほしい」
「練習を休んだら、本番で浮いてしまうのではないか」
「ここで甘やかしたら、ずっと学校に行けなくなるのでは……」
そうやって不安や焦りを募らせてしまうのは、親として当然のお気持ちです。
しかし、不登校支援の現場でお子さんやご家族に伴走してきた私から最初にお伝えしたいのは、「行事前の行き渋りや拒否は、決して甘えや我がままではなく、限界を感じている心身からのメッセージである」ということです。
この記事では、なぜ10月の学校行事がこどもにとって大きな負担になるのか、その背景と、ご家庭で意識したい「プレッシャーを和らげる関わり方」について整理してお伝えしていきます。
1. 10月に「行きたくない」が増える理由――行事特有のプレッシャーとは?
夏休みが明けた9月、子どもたちは新しい学期に馴染もうと、大人が思っている以上に強い緊張感を持って過ごしています。10月上旬は、その「9月の緊張がふっと切れる時期(二次疲労)」でもあります。
そこに重なってくるのが、運動会や文化祭といった「学校行事の練習」です。
普段の授業とは異なり、行事の準備期間には学校生活の構造がガラリと変わります。
- 時間割の変化: 授業の合間に長時間の練習が入る
- 集団行動の増加: 学年全体・全校での整列、ダンス、体操、合唱などの同調
- 指示や声かけの過密化: 先生やリーダー役の生徒からの指示、大音量のマイク声や音楽
- 役割の重圧: 実行委員、応援団、リレー選手、パートリーダーなどの責任
普段ならなんとか教室で過ごせていた子にとっても、この「非日常的な環境の変化」は、心身に大きな負荷として押し寄せてきます。
2. 「甘え」ではない。刺激に対する感受性と集団行動の同調圧力
行事の練習を嫌がる姿を見ると、周囲からは「みんな頑張っているのに」「協調性がないのでは」といった声が聞こえてくることがあります。しかし、行事を負担に感じる背景には、お子さん一人ひとりの感覚や特性、心理状態が深く関係しています。
① 音や視線、人混みに対する過敏さ(感覚過敏)
体育館やグラウンドでの大音量の音楽、太鼓の音、マイクの拡声声、周囲のがやがやとした騒音。これらは、聴覚や視覚に過敏さ(感受性の高さ)を持つお子さんにとって、脳がパニックを起こしそうなほどの強い刺激になります。
② 「みんなと同じ」を求められる同調圧力
運動会やダンス、合唱などは「全員で揃えること」が美徳とされがちです。自分のペースを保つことが得意な子や、集団行動に苦手意識がある子にとって、「みんなと一致させなければならない」という強い同調圧力は、息が詰まるほどのプレッシャーになります。
③ 失敗への強い恐怖や評価への不安
「自分がダンスを間違えたらどうしよう」「リレーで足を引っ張ったらクラスに迷惑がかかる」といった真面目で責任感の強い子ほど、失敗や他者からの評価に過剰な不安を感じてしまいます。
こうした背景があるため、「行きたくない」という拒否は、単なる怠けではなく、「これ以上強い刺激を受けると心が壊れてしまう」という自己防衛(心からのSOS)なのです。
3. 「出るか・休むか」の二者択一にしない――柔軟なグラデーションの選択肢
行事への参加を考えるとき、大人は無意識のうちに「参加する(頑張って行く)」か「欠席する(あきらめる)」の2つの選択肢(オール・オア・ナッシング)で考えてしまいがちです。
しかし、お子さんのプレッシャーを和らげるためには、「0と100の間にある柔軟なグラデーション(選択肢)」を準備してあげることがとても効果的です。
例えば、以下のような選択肢を学校側とも相談しながら検討してみましょう。
- 「練習は休んで、本番の観覧だけ行く」
- 「自分の出場種目(ダンスやレース)が終わったら、早退する」
- 「グラウンドや体育館ではなく、保健室や別室で音だけ聞く・見学する」
- 「準備や裏方の作業(道具出しやポスター作成など)だけ手伝う」
- 「午前中だけ参加して、午後は家で休む」
- 「今回は思い切って全体を休み、おうちで穏やかに過ごす」
大切なのは、「どんな形であっても、本人の意思で選べたこと」を認めてあげることです。
「全日程・全種目に出て当たり前」という枠を外し、小さな選択肢をいくつか用意してあげることで、お子さんの心の負担は大きく軽減されます。
4. ご家庭で意識したい3つの関わり方
行事前のプレッシャーで揺れているお子さんに対し、ご家庭で親御さんが意識できる関わりのポイントを3つご紹介します。
① 理由を強く問い詰めず、つらさの感情をそのまま受け止める
「なんで行きたくないの?」「練習の何が嫌なの?」と理由を追求すると、理由をうまく言語化できないお子さんはさらに追い詰められてしまいます。
まずは「そっか、練習が続いて疲れたんだね」「行事の雰囲気が少し重たく感じているんだね」と、今感じているつらさをそのまま肯定してあげてください。
② 「家庭を安心して力を抜けるシェルター」にする
学校で強い緊張や同調圧力に晒されている分、家庭の中だけは「否定されない」「急かされない」「比較されない」安全な居場所であることが何よりの回復の土台になります。
お家でゲームをしていたり、ボーッとしていたりする姿を見ると不安になるかもしれませんが、「外で張りつめた分、お家でエネルギーを充電しているんだな」と温かく見守ってあげてください。
③ 最終的な判断を本人の意思に委ねる
「明日はどうする?」と何度も確認されると、子どもは「親の期待に応えなければ」と余計に苦しくなります。
「もし行けそうなら一緒に行こうか。しんどかったら家で休んでも大丈夫だよ。どっちを選んでも味方だからね」と伝え、自己決定を尊重してあげることが、お子さんの自己肯定感を守ることにつながります。
5. まとめ――一人で抱え込まず、一緒に整理していきましょう
秋の学校行事は、子どもたちにとって思い出深いイベントである一方、不登校や行き渋りのリスクが高まる非常に繊細な時期でもあります。
もし今、お子さんが行事を前に苦しんでいたり、朝起きられなくなっていたりしても、決してご自身の育て方を責めないでください。それはお子さんが自分の心を守ろうと必死に発しているSOSであり、ご家族が新しい関わり方を模索するための大切なプロセスでもあります。
学校との調整(見学や部分参加の交渉)や、お子さんへの具体的な声かけに迷われたときは、ぜひ一人で抱え込まず、外部の専門家を頼ってください。
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ティーンズ・プレイスでは、代表の中馬(精神保健福祉士・社会福祉士)が、お子さんの心理面のケアだけでなく、学校側との環境調整(出席扱いや行事での配慮の交渉など)も含めてトータルで伴走しています。
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