《小説》スニ【猫の日企画】

 

その日、私は置いてきぼりにされた。

 

『わあ、この子かわいい。』

そう言ってくれた、かつての飼い主だったナツさん。彼女とはペットショップで出会った。その日は母さんとも父さんとも、兄妹たちとも別れなくちゃならなくて必死で抵抗したのを覚えている。呆気なく引きはがされて、ナツさんの元に連れてこられたのだけれど。

 

はじめのうちは優しかったナツさん。私をミミと呼んで可愛がってくれたっけ。でもそのうちに、仕事が忙しいからとご飯も3日に1度しかくれなくなった。

 

 

 

あの日は、嵐の日だった。

 

夕方、ナツさんにダンボールに入れられた私は、痩せてガリガリだった。珍しく前日のナツさんは優しかったけど、そういうことだったのかと今ならわかる。あのときはわからなかった。まだちっちゃい子供だったから。

人間が『タイフウ』と呼んでいたそれは、夜には酷く荒れて。ダンボールごと吹き飛ばされそうで怖かったなあ。

 

大好きなお日様も見えなくて、ダンボールから出ることもできなくて、私は必死で目の前の壁を引っかいた。それでも少しだけ穴は広がったけれど、マトモにご飯を食べていなかったからすぐ力尽きたんだっけ。

 

 

 

気がついた時には、ナツさんじゃない、知らないニンゲンに抱かれていた。それも、オスの子供。

それが、ヒュウガだった。

 

 

 

ねぇ、ヒュウガは優しかったね。ご飯もちゃんとくれたし、甘えんぼな私とずっと一緒にいてくれて。風邪を引けば「ビョウイン」とやらにも連れてってくれた。……私はあの場所嫌いだけど。

 

それに、名前もくれたね。『スニ』って名前も。

あのときはまだちっちゃかったヒュウガが、「エイゴ」というので晴れてるのを意味する「sunny」ってのを「ローマジヨミ」したんだっけ。私にはよくわかんないけど、でも気に入ってる。

 

 

 

 

 

 

 

……泣かないでよ、ヒュウガ。

 

しょうがないさ、私はもう婆さんなんだから。天国に行く時間が来たんだよ。

 

 

 

 

 

だからね、笑ってみせて。私はその顔が好きだから。

 

あのときみたいに、『ダイジョウブだからね』って言ってみせて。きっとすごく安心するから。

 

「スニ」って呼んで。ヒュウガがくれたその名前が好きだから。

 

ぎゅっと抱きしめて。私はヒュウガが好きだから。

 

 

 

 

 

 

 

そしたら、あの時よりも随分大きくなったヒュウガが言ってくれた。泣きながら、笑いながら。

 

 

 

 

 

 

「スニ、これからもずっと一緒だからね。」

 

 

 

 

 

 

もちろん、だってスニはヒュウガのこと大好きだからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

大好きだよ。これからもずっと。

 

 

 

そう伝えたくて、ニャオンと鳴いてみせてから、私はふわぁ、とあくびをして目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

最期に見た空は、私の名前と同じように晴れた、雲ひとつない青空だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*猫の日ということで文芸部員時代の過去作を大幅加筆修正して投稿。動物虐待ダメ絶対。温もりがあなたの心まで届きますように。復帰まで秒読み段階に近づきつつある雪灯より。

 

 

 

 

 

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全2件のコメント

  1. モモコ 2018/2/22 11:20

    今日は、猫の日です。
    こんな日も、あるのでしょう。
    好きだけでは、飼えないのが、動物と思います。
    私の愛犬のチビも、老犬とか・・・。
    動物には、癒やされるかも知れません。
    雪灯さんの愛を、感じました。
    小説が、楽しみです。

  2. sky 2018/2/22 00:58

    雪灯さん
    泣きそうになりました。
    私の家にも大きなトイプードルがいます。その子は保護施設から来ました。その保護施設には飼い主さんが高齢になって入院したからとか明らかに病気の状態で捨てられた子がいます。
    私も愛犬くんが亡くなることを考えると気が可笑しくなりそうです。私もきちんと笑って見守ってあげたいです。そしてまた愛犬くんのような辛い子を幸せな子にしてあげたいです。
    動物に平気で虐待する人の心理がわかりません。その子のお母さんが一生懸命産んでくれたというのに勝手に意図的に傷付けるなんて。何があろうと人の勝手な都合で動物を捨てて良いとは思えません。「待っててね」と「さよなら」は違うのです。
    児童虐待も動物虐待も何故こんなに弱い子を狙うのでしょう?いじめもそうですね。
    もっと動物が幸せを感じられるような世界になることを祈ってます。
    長文&支離滅裂ですみませんでした。

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