≪小説≫星に願いを

 

 7月に入った。受験生の夏が始まる。ああ、ほらまた。今日も模試の受験票が配られる。裏返して、またため息をついた。『志望校』のワードが目につく。締め付けられるような思いが、静かに胸のなかを支配していく。

「私は県外の大学に行くよ、早く家出たいし。」

 帰り道で明るく言い放ったあの子も、

「どこでも同じようなことは勉強できそうだし。だったらYK大学いいなーって。

 同じ部活でずっと行動を共にしてきたあの子も、

 みんな、みんな…………、遠く離れて行ってしまう。

 

 わかっているのだ、彼女らの未来に私が口を出すことなど、あってはならないことだと。私のわがままで進路を変えさせて、それによって後悔させるなんてことも、したくはなかった。

 彼女らは私にとって、唯一無二の存在だった。迷惑をかけたくなくて無理ばかりしていた私に、そんなことしなくてもいいと言ってくれたのも。お前の大丈夫は信用できないんだよ、と小言を言いながらも体調を崩した私を保健室に連れていってくれたのも。早く死にたい、もう生きていたくなどない、と言った私に馬鹿なことは言うな、学校をやめてもいいから生きろ、と全力で怒ってくれたのも。私が抱え込んでいた心の重荷を一緒に持とうとしてくれたのも。全部、全部、彼女らが――――私の大切な親友たちがしてくれたことだった。

 

 だからこそ、この悩みだけは誰にも言えなかったのだ。

――――みんなと別れたくない、もっとずっと一緒にいたい、なんて。

 

何度も悩んだ。彼女らから志望校のことについて語られるたびに、ひどく複雑な気分にさせられた。

でも、思った。私が応援しなくてどうする。志望校について話している彼女らの顔は笑っていた。彼女らに後悔などさせたくはない。させられない。

私は県内の大学にしか進学を許されなかった。それでもよかった。志望していた大学ははじめから県内だったから。だからこそ。だからこそ、送り出してあげなきゃいけないのだ、と思った。県外に進学していく親友たちを、笑って送り出せなきゃいけないのだ。だって、別れたくないという想いと同じくらい、親友たちに幸せになってほしいという想いも強かったから。

 

七夕前日、教室の背面黒板にクラスメイトが人数分描いた短冊。私はこう書いた。精一杯の幸せを願って、なかなか口に出して言えない想いを書いた。

 

『みんなの願い事が叶いますように。みんなが幸せでありますように。』

 

なぜかクラスメイト扮する神様から、『A,良い人だなぁ』と返事が届いた。

 

 

 

     願わくば、君に幸あれ――。

 

あとがき

七夕の願い事に「家族全員がケンカもなく幸せでありますように」と書こうと思っていたら母から「絶対に無理だね」って速攻で否定された雪灯です。どうしても七夕の今日出したくてこっそり授業の最中にネタを考えてました(先生ごめんなさい……)。

今回はいつもとちょっと違うネタで書かせて頂きました。進路ネタです。そして全部私自身の経験談です。皆様の中にも「あ、私もこう思ったことある!」っていう人はいるのかな。どこかで誰かが共感していてくださったらうれしいです。

最近はいろいろな方からコメントを頂いています。私がここで活動を始めてひと月半。どのコメントもあたたかいものばかりで本当にうれしいです。作者冥利につきる、というか。これからもここでゆっくり、自分のペースで活動していけたらいいなと思っております。これからもよろしくお願いいたします。

それでは今回はこの辺で。

ご愛読ありがとうございました!

 

 

 

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全6件のコメント

  1. 匿名 2017/8/5 15:02

    まぁ・・とにかく謝る。

    ごめん。

    ただ、俺は別れた人の大切さは嘘と思う。

    お金がない環境で育った俺には力だけはあった。

    どんな時も喧嘩では誰にも負けたことないし。

    ただ、あなた中心じゃないのでアンチがくるなんて当たり前ですよ。

    自分も過去他の掲示板で散々ネトヤンに叩かれたし。

    だからアンチもいるのが自然と認識するのがネットで生き残る唯一の手段です。

    • 雪灯 2017/8/5 23:08

      ごめん、というのはどういう意味でしょうか?
      何に対して、あなたは私に謝罪しているのですか?
      私の心の傷を抉ったことに対して? それとも私の大切なものを傷つけたことに対して? 若しくは、ただ謝罪したという事実を作るため?
      別れたらそれで関係が終わるというのなら、私は孤独で生きていくことになります。ひとりきりで生きていくことのつらさも知っていて、甘んじてそうなれと言うのなら、私はきっとそうなる前に自ら命を捨てるでしょうね。自分ひとりだけで傷つくことには悲しいほどに慣れてしまいましたから。
      でも信じていたいのです。ただの夢物語かもしれません、でも私は大切な友をずっと信じ続けていたい。それが私にとっては大切で、本当に価値のあることだから。

      アンチがくるのなんて当たり前? それを当たり前にしてしまったのは誰でしょう? 当たり前であるべきではないものを当たり前にしたのは…………。
      あまり当たり前として考えたくはないですね。あえて厳しい意見としてとらえるようにはしていますけど、それでも傷つくことにはかわりないです。その傷つくことが当たり前の世界なら、いつでも戦争が起きてしまうような、そんな世界な気がします。意見が食い違うのは仕方がないです。でも、言い方ってものがあるのではないのでしょうか?

      大分口調が荒くなりました、大変申し訳ございません。しかし、あえてこういう言い方をせざるを得ないことにご理解いただけましたらありがたいです。
      できればもっと穏やかな口調で話したかった、ですがこうなってしまえば私にはこの感情を止める術はありません。最後に、人々との関わりの大切さがあなたに理解される日が来ますように。私にしては厳しくなってしまった口調を謝罪して、締めくくらせていただきます。

  2. 匿名 2017/7/29 16:32

    もう別れれば友達でも何でもないだろ。

    • 雪灯 2017/7/30 11:51

      貴重なご意見、ありがとうございます!

      確かに、別れてしまってから今までと同じような付き合いを保つことができた友人は私にはいません。中学を卒業してから音信不通になってしまった友人ももちろんいます。
      でも、別れてしまっても友人として付き合いを続けることはできると思います。LINEで連絡を取ったり、たまには会う約束をしてみたり……。現に私はそうやって付き合いを続けている友人がたくさんいます。
      別れてしまえば友人としての繋がりが途切れてしまう訳ではないのではないでしょうか。確かにそんなこともなきにしもあらずですが、本当に大切な友人とは離れてしまっても完全に付き合いが途切れてしまうことはないのではないでしょうか。

      私も深く考えるきっかけになりました。今後はお手柔らかな意見をお待ちしております。コメントありがとうございました。

  3. モモコ 2017/7/8 12:25

    進路が、悩みますよね。
    後悔したくないと、誰しもが、思うことかも・・・。
    でも、自分で、決めたなら、仕方ないのでしょう。
    今の七夕の願いは、何ですか?
    私は、健康のままで、ありたいです。
    次の作品も、楽しみにしてますよ。
    私的な意見でした。

    • 雪灯 2017/7/8 15:46

      モモコさん、毎回ご感想をありがとうございます!

      そうですね、進路が分かれることはもう正直言って割りきるしかないです笑。それぞれの進む未来ですから。それでも悩んでしまった私の解決策は「連絡を絶やすな!」と伝え続けること。離れてしまってもまたいつか絶対に再会できるように、できなかったとしても言葉は交わせるように……。

      七夕にはやっぱり志望校の合格とかの願い事になってしまいましたね……。やっぱり自分の願い事だとあまり人に見せたくないようなものだったりそもそも思い付かなかったりするので、みんなの願い事が叶いますように、とかっていう願い事が多いです。

      いつも楽しみにしてくださってありがとうございます! 受験もあるので更新が途切れることもあると思いますが頑張っていきますので、楽しみにしていてください。今回もご愛読ありがとうございました!

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