≪小説≫生の意志、死の望み

 

見慣れた街並みに、思い切り息を吸い込んだ。いつもと何一つ変わったところのない街。澄んだ空気。度が過ぎるくらいに眩しい太陽。

「もう、やめてもいいですか……?」

そう呟いて振り向く。良かった、誰もいない。すっきりと晴れた空。良かった、こんな日に有終の美を飾ることができて。

一歩、先に歩を進めてみる。一歩、また一歩。そうやって私の命は終わりに近づいていく。今だったら、私の行為に水を差す人もいない。

 

ふと思い出したのは、また家族のこと。お姉ちゃんだから、いつもその言葉だけで私は何も言えなくなった。辛かった、兄弟には注がれている愛を、自分にも注がれているのかわからなくなっていくことが。ずいぶんと前から、そんなものなど感じられなくなっていたから。

アイツだったらなんて言うんだろな、なんて思い出したのは、たくさんとは言えないほどしか持つことができなかった友。苦しかった、そばで話しているはずなのにいつも感じなければならなかった孤独感が。一緒に話しているはずなのに、なぜかいつもひとりきりでいるような気がしていたから。

 

いつからだっただろう、人と関わることが辛く感じられるようになってきたのは。いつか裏切られるんじゃないかと不安を抱えるようになったのは。何度思っただろう、本当にこの人はそう思っているのか、心の底では厄介者だと思っているのではないのかと。

 

いつの間にか、たくさんの人のことを信じられなくなっていて。そうなれば死を望むようになるのは時間の問題だっただろう。私は死を望んだ、そして今ここにいる。

――――午後の授業が始まったばかりの校舎の屋上に。

 

「もう、やめてもいいですか……?」

生きることも、何もかも。

ずいぶんと前から疲れたのだ、存在すらしていないような自分に。もういい加減に、全てを終えてしまいたかった。そのことを、許してもらいたかった。

 

「バカっ、アンタ何やってんの!

離してよ、手を掴まれたらできなくなるじゃない。

「何にも言わないで消えたと思ったらこんなところに……、そんなバカなことしないでよ!」

何がバカなことなの? 別に私一人消えたって世界は何も変わらないじゃない、むしろ私なんかいない方がみんなにとっては『いいこと』でしょう?

 

だったらもう、

「早く死なせてよ、」

…………早く、楽にしてよ。

 

「やだ。絶対にやだ。」

「私は何があってもアンタの手を離さない。」

「私はアンタの友達でしょう? 私はアンタがいなきゃやだ、アンタがいなきゃ生きていけないよ、きっと。」

「それがアンタの生きる理由じゃなきゃ、ダメ?」

精一杯に私を引き留める親友。そのうち手の力が弱まると思っていたのに、逆にだんだん強まっていく。その力が、私に意志の強さを伝えていた。

 

ダメだ、ここまで言われちゃ死ねない。そもそも死ぬ覚悟があっても、いざとなるとやっぱり死ぬための勇気は出ない。そんなときに不意打ちでこんなことを言われて、死ぬことができるはずがなかった。

 

ふっと、力を弱めた私。

驚く親友に引っ張られて、そのまま倒れこむ寸前のところで抱きとめられた。

 

…………ありがとう、

「私さ、ずっと誰かにこうしてほしかったんだね、」

 

親友は私の涙を拭った手で、笑って優しく私の頭を撫でた。

 

 

あとがき

半日以上寝倒してスッキリしているはずなのに、明日からの一週間のことを考えると驚くほど憂鬱。現在進行形でサザエさん症候群な雪灯です。受験生になってから模試や課外授業のせいでブラック企業並みに休みがありません、そのせいで通院すらできないとは思っていなかった…………。皆様、休みはこまめにとりましょう。そうでなければ体も心も私みたく壊れます。

さて、そんな話は置いておいて。今回はとあるシーンのお話です。皆様の中にも主人公(=語り手)のように辛い感情を持っている方は大勢いると思います。かくいう私もその一人ですし、その辛さは人並み以上にわかっているつもりでいます。

辛い気持ちはなくならない、いつかは向き合うしかない。私は親友にそう教えられました。だから、彼女から伝えられたことを私も誰か同じような思いをしている人に伝えたくて、今回はこのお話を書きました。そして、今は会話が絶えてしまっている彼女への心の底からの感謝を込めて、今回は締めくくらせていただきました。

苦しい思いをしているあなたヘ。

誰でもいい、その思いを少しでも吐き出してみてください。きっと誰かひとりは味方になってくれる人がいるはずです。私も相談にのりますので、いつでもコメントしてください。むしろ相談はウェルカムですよ、だって私は自分の経験を生かして誰かの助けになりたくて「仲間」に入ったんですから。

一緒に少しずつ、辛いことも乗り越えていきたい。

きれいごとかもしれない。でも黙っているよりもよっぽどかマシなことじゃないでしょうか?

 

明日からの一週間、少しでも気楽に乗り越えていけますように。

ご愛読ありがとうございました!

 

 

 

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全6件のコメント

  1. mi- 2017/7/2 23:42

    小説読ませていただきました。
    なぜか涙がポロポロと…止まらなくなってしまいました。
    辛い時に言ってくれた言葉ってどんな時でも自分を助けてくれますよね。反対に辛い時に言われた悲しい一言は心の傷となって消えない…。
    たくさんの人に読んでもらいたいな…なんて思いました。

    • 雪灯 2017/7/3 21:44

      mi-さん、ご感想ありがとうございます!
      涙が止まらなくなってしまった……、そこまで深くこの小説を読んで考えていただけたことが本当にうれしいです。
      確かに、ご感想にあるように辛いときにかけられた言葉ひとつでいろいろな思いをさせられます。私の場合は自分の感情を表に出すことがあまり得意ではないので、辛いときもそれに追い打ちをかけるような言葉しかかけられなかったことがほとんどです。それを全部文芸部の部誌の投稿作品に書いていたら当時の顧問から「気づけなくてごめんね」と謝罪をうけました。顧問の先生にはむしろ良くしてもらったことばかりだったのですが、その言葉でも随分と救われた気分になったことは確かなのです。言葉って難しいですよね……。
      またこれからも、このサイトでいろいろな小説を投稿しようと思っています。よろしければ、またどこかのコメント欄でお会いできることを楽しみにしています。今回はご感想、本当にありがとうございました!

  2. 聖也 2017/6/28 01:13

    人ってどんなに苦しくても誰かに必要とされてるだけでこんなに元気づけられるんだとこの小説を読んで感じました。

    • 雪灯 2017/6/28 14:39

      聖也さん、ご感想ありがとうございます!
      そうですね、私自身親友の言葉に随分と助けられました。
      私がうつだと診断されてから1年半以上になりますが、その間何度自殺を考えたかわかりません。でも「ごめん、もう限界、もう無理だ」って言うたびに「学校休んでもやめてもいいから死ぬなんてこと言わないで」って言ってくれる友達に気持ちは随分救われました。私にとっても相手にとっても必要不可欠な存在だと今は思っています。そしてそんな友達を持てたことが幸せだとも。
      この小説がどこかで力になっているのならうれしいです。ご愛読ありがとうございました!

  3. モモコ 2017/6/19 10:53

    小説は、拝見しました。
    何のために、生きてるのか?
    生きてる理由を、誰もが、欲してるのでしょう。
    雪灯さんの作品は、読むと共感します。
    自分1人だけの苦しみじゃないと思います。
    毎日の積み重ねは、大変ですが、お互い様です。
    乗り越えてゆくことが、目標でした。

    • 雪灯 2017/6/22 22:13

      モモコさん、いつも感想をありがとうございます。共感していただける……、作者冥利に尽きる言葉をありがとうございます、そんなお言葉をいただけるとは光栄です。
      悩んでいるときに親友が書いた詩から、今回は少しだけ私なりの解釈で引用させていただきました。高校に入ってから、一番近くで支えてくれた彼女の言葉はかなり重みがありました。今でも辛いときはその詩を読み直しています。
      お互いに少しずつ、前を向いて生きていけますように。またのご愛読をお待ちしています。ありがとうございました!

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