ずっと、抱きしめてほしかった

小学生のとき、私たち家族は3LDKの一軒家に暮らしていました。
二階の和室が寝室で、夜には4組の布団がなかよく並べられます。
私はいつも、そこで一人で眠りにつきました。

遅くまで仕事をして帰ってこない父。
夜遅くまで起きている兄。
「子どもははやく寝なさい」と言いながら兄と一緒にテレビを観る母。

4組の布団が並んだ部屋は、私がひとりで眠るには大きくて、大きすぎて、いつも静かに独りで泣いていました。

一階のリビングから兄と母の談笑が聞こえてきてまた泣きました。

みんなが上がってくる頃には、いつも泣きつかれて眠っていました。
泣き顔を見られるのが嫌で、いつも布団を頭まで被って眠っていました。

大人になるしかなかった

小学二年生のときから「私は親に迷惑をかけてはいけない」「しっかりしなければ」と思って生きてきました。
当時兄は喘息もちで、「学校に行きたくても行けない」という状況も珍しくなかったのです。正直学校に行かずに朝からゲームをしている兄を羨む気持ちもあったけれど、夜キッチンで父と母が「担任の先生と……」「出席日数が……」と難しい話をするのを聞くたびに「私は健康なんだから」と自分の気持ちに蓋をしてきました。

ほんとは学校で嫌なことがあった。
ほんとは私だって一丁前に悩んでた。
ほんとは私の話をきいてほしかった。
ほんとはみんなで一緒に寝たかった。
ほんとは……抱きしめてほしかった。

言えませんでした。
ひとつも。

大人にならなければ、大人になろうとしなければいけない世界でした。
鎧で心を覆って、武器を持って戦わなければ、生きていけない世界でした。
私を守ってくれる人なんていなかった。私を守ってくれる場所を教えてくれる人なんて、いませんでした。

私には「反抗期」がありません。
反抗したら捨てられてしまうかもしれないから。そもそも「お前の親なんかやめてやる」と言った母にどう反抗するというのでしょう。親をやめられてしまったら、こっちだって子どもをやめるしかありません。

ずっと塞いでいたら、自分の気持ちが分からなくなりました。
分からなくなって、よかったと思いました。
そのまま心なんて無くなってしまえばいいと願いました。

でも実際には心は無くなってくれなくて、私の中の奥底で、ずーっと「抱きしめてほしい」「愛してほしい」「認めてほしい」と叫び続けていました。
その声が、ずっと苦しかったです。
求めても報われないのなら、いっそ求めたくなんてありませんでした。

でも、分からなくなってから何年も経ってから
「求めていいんだよ」
と言ってくれる人が現れました。

愛してくれる人が現れました。
存在そのものを認めてくれる人が現れました。

一番先に浮かんだのは「拒否」でした。
こんなに愛されるはずがない。こんなすてきな人たちにこれ以上頼っていいはずがない。この人たちは陰で私を笑っているに違いない。

一度はじかれたこの手を、のばして、もしまた拒絶されたら。

こわい。求めたい。一人になりたい。頼りたい。見せ掛けの愛なんていらない。褒めてほしい。近づかないで。私を認めて。傷つきたくない。傷つけてほしい。ひとりはいやだ。負担になりたくない。愛されたい。甘えたい。許してほしい。
いくつもの声が混在して、わけがわかりませんでした。

今までこんなことなかったのに。
「大丈夫ですよ」って笑顔で言えていたのに。

私は弱くなってしまったのかな。
そう、不安になりました。

はじめて人を守りたいと思いました。
人を傷つけたくないと思いました。
愛してくれるこの人たちの負担になりたくないと思いました。

信じれば信じるほどに、悩みなんて吐き出せませんでした。

でも、なんでかまわりにはあたたかい人ばかりで。
上手く言えなくても、言葉に詰まっても、泣いてしまっても、私の声を聴き続けてくれました。
拒否せずに。怒らずに。

最近、はじめて人に「抱きしめてほしかった」と(LINEでですが)言うことができました。
その人は「次会えたときはハグしてあげるよ」と言ってくれました。

ただそれだけのやりとりに、どれだけの勇気が必要だったか。
ただそれだけのやりとりが、どれだけ私の心を癒したか。

感謝してもしきれません。

今でも、部屋でひとりで寝ていると時折あのときのことを思い出します。
嫌な夢を見ることもあります。
切ない夢を見ることもあります。
起きたら涙が流れていた、なんてこともありました。

でも、あのときとは違います。
私には、私のことを大切にしようとしてくれる人がいて、そして大切にしたいと思える人がいます。

弱くても、不器用でも、子どもでもいい。
「これができるから」とか「これをやったから」とかじゃなくて、「存在そのもの」が愛しいんだと。

すこしずつ、自分自身も、抱きしめてあげられそうです。

泣いていいんだよ。できなくていいんだよ。

そう思えるようになってから、なんだか肩がすごく軽いです。
当時はそれが普通だと思っていたけれど、きっとずっともう何年も、私はこの肩に、自分の体格にはとてもそぐわない量の荷物を抱えていたんだと思います。

久々に、空がきれいだと感じました。

今日は、ずいぶんとゆっくり眠れそうです。

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全4件のコメント

  1. 鷹れん 2016/9/7 21:25

    Yukiさん
    こんばんは、コメント有難うございます☆
    お褒めいただき恐縮です(*´`)
    私もがんばります。これからもよろしくお願いしますね♪

  2. 鷹れん 2016/9/7 21:20

    キュウちゃん
    いつも有難う(*´︶`*)

    いつのまにか「愛されること」に対する恐れがなくなってたよ。
    どうせいつか離れていってしまうとか、私にはそんな資格ないんだとか。
    きっと、そういう不安を感じさせないくらいにあったかい人たちが、まわりにいてくれたからだと思う。

    どれだけ囚われてしまっている考えがあっても、「そういう人」がいれば、いつか変われるのかもしれないね

    こちらこそ、いつも読んでくれてありがとう(*´`)

  3. Yuki 2016/9/5 23:23

    鷹れんちゃん

    こんばんは!
    鷹れんちゃんの優しさや芯の強さが伝わってきた素敵なブログでした。(^^)

    笑っていても心の奥底では苦しんでいたり泣いてる人達に対してさっと手を差し伸べられる、そんな人間になりたいって改めて思いました。(*^^*)

  4. キュウ 2016/9/2 06:30

    心も体もまるごと抱き締めてくれる人、あらわれてよかった。
    本音を吐き出せる人も。

    私にもあらわれたし、他の「親に苦しめられた人」にもあらわれてほしい。

    自分が自分の本音に気づいたときを思い出して、朝からちょっと涙が出たよ(*´-`)
    いつもブログありがとうね。笑

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